事例:森永乳業の選択
森永乳業ロゴ
Oracle Database Enterprise Edition, Oracle Data Guard

木村 康二 氏   植田 昌章 氏   横尾 浩司 氏
森永乳業株式会社
執行役員
情報システム部長
木村 康二 氏
  森永乳業株式会社
情報システム部
マネージャー
植田 昌章 氏
  森永乳業株式会社
情報システム部
課長代理
横尾 浩司 氏
「阪神淡路大震災における経験が災害に対する対応の起点でした。当時は分散型のシステム構成だったため、影響範囲が限られていましたが、システムの集中化が進んだ現在では、耐災害性の高いシステムを構築することは、当然のことだと考えていました」 森永乳業株式会社 執行役員情報システム部長 木村 康二氏は語る。


今回のお客様
会社名:
森永乳業株式会社
創業:
昭和24年(1949年)4月13日
会社規模:
資本金:21,704百万円
(平成17年3月31日現在)
従業員数:3,092名
(平成17年3月31日現在)
主な事業内容:
牛乳、乳製品、アイスクリーム、飲料その他の食品等の製造、販売
導入製品:
・Oracle Database Enterprise Edition
・Oracle Data Guard
対象システム:
・受注システム
・PLシステム
導入効果:
・災害発生時のリスクヘッジ
・事業継続への基盤構築
事業継続の原則に基づき日々の生活を支える商品を提供


森永乳業が提供している商品は、消費者の日々の生活を支える食品が中心となっており、提供が滞ることが許されないものである。この考えが森永乳業のIT構築における基本思想となっている。

森永乳業が数年前まで使用してきたITインフラはいわゆる分散型のシステムであったが、近年の合理化施策に伴い、現在では集中型のインフラに変わっていた。
一般的に集中型に比べて分散型のIT構成は、耐災害性が高いという特徴がある。

平成7年(1995年)兵庫県南部を襲った阪神淡路大震災で、森永乳業の近畿工場は被害を受けていた。この震災の影響で、当時分散型でシステムを構築していた3台のサーバーのうち2台が影響を受けて停止することとなったが、分散構成だったためなんとか業務を継続することができたのである。この災害時の被害を教訓として、これ以降森永乳業では常に災害への対策を念頭に入れたシステムの検討を続けていた。


災害の影響範囲を分析し、バックアップ範囲を個別に規定した

森永乳業が広域バックアップを検討した対象システムは、オラクル製品を使用したリアルタイム性の高いシステムと、ホストを使用したバッチ処理系のシステム、そして電子メールシステムである。

オラクル製品を使用したシステムでは、日常業務を継続するために必要なコアとなるデータを扱っていること、そして業務を実行するために必要なプログラム処理があることから、災害に対する影響範囲が特に大きいと判断した。

2004年の夏頃から業務の洗い出しを開始し、まず受注と需給システム、ホスト系システム、そしてメールシステムの大きく3つに分類し、それぞれについてバックアップの範囲とレベル(復旧時間要件を数段階に区分)を定めた。

まずアプリケーションには手を入れないでバックアップを実現することを基本方針とした。事実、業務アプリケーションには何の変更も必要なかった、と需給システムを担当した横尾浩司氏は語る。広域バックアップの対象は大きくデータとプログラムに分けた。特に需給システムのデータに関してはOracle Data Guardを採用し自動バックアップ構成とした。Oracle Data GuardはREDO Log(更新ログ)を待機系に転送しリカバリを実行することでバックアップを実現する機能で、アプリケーションから透過的に導入できる点が特徴である。ログの転送は非同期に実行され一日で数十GBのREDO Logが発生するが本番系サーバーへの影響は最小限に留まっている。プログラムに関しては、毎夜最新のプログラムモジュールを待機系に自動コピーしている。

オラクル製品を使用している受注システムと需給システムでは、データのリカバリポイントを15分から20分程度とし、業務再開を2時間から3時間以内に行えるようにした。
ホスト系システムでは前日のデータを保存しておき、必要な時のみバックアップ機を立ち上げることとした。
残る電子メールシステムについては緊急連絡のインフラと位置付け、災害発生時はメールサーバのバックアップ機起動とサービス再開を最優先し、災害前のメールは見れなくてよいと割り切った。本番機が復旧すれば災害後にやりとりしたメールデータを戻せる仕組みになっている。


システム構成図
システム構成図


ネットワークはWANとVPNに分け機器も併せて全てを二重化

サーバーとともに、災害時で影響を受けるのがネットワーク。サーバーだけに災害対策を施しても方手落ちである、と情報システム部マネジャーである植田昌章氏は語る。森永乳業では、2004年の12月にIP-VPNと広域イーサとの相互接続(インターワーク)を実施、2005年の3月にはルーターなど全てのネットワーク機器についての二重化構成が完成した。
これは震災時の経験から、メールシステムによる連絡が有効であることから、業務システムと併せ、メールシステムの生命線であるネットワークを確保するためにも重要であった。

災害の時には、被災地の状況確認のために電話問い合わせが増大するため、電話による連絡がなかなか繋がりにくくなる。特に被災地域からの発信は可能であるが、被災地への電話は十数回に1回程度しか繋がらなかったという。このような状況において、メールによる連絡手段が確実で非常に有効であったという。


情報センターの災害対策は建物からPC、プリンターまでにわたる、
総合的な災害対策を実施している

災害対策にはシステム面だけでなく、建物自体への対策も重要となる。森永乳業の情報センターの建物は、震度7を想定した耐震構造となっており、当然ながら自家発電設備も備えている。この自家発電装置を稼動させるための重油も2週間分備蓄している。さらに安定した電源供給のためのCVCF(Constant-Voltage Constant-Frequency)も設置している。これらに加え、空調のための冷却水の備蓄と地下水利用のための設備を備えている。当然ながらサーバーへの免振装置だけでなく、全てのPCやプリンターの落下防止策として、耐震ガードを設置するといった、考えられるあらゆる対策を実施している。おそらく製造業でこれほどの対策をとっている企業は他に類をみないと言えるのではないか。


40km離れたデータセンターにバックアップセンターを設置

二重化したネットワーク経路は広域イーサと、それを補完する広帯域の公衆回線を利用したVPNで構成されている。このそれぞれを二重化した回線網でバックアップセンターとの間をバックアップデータが毎日コピーされていく。

森永乳業では、広域災害と局所災害のそれぞれについて影響範囲を想定し、それぞれどのような障害が予想されるかを予め分析して対策を準備している。さらに全国にある工場や研究・情報センターなどの事業所別に、想定される地震の震度と想定被害、復旧までの期間を予め予測している。

ここまで準備しても、まだ不安は残ると執行役員情報システム部長の木村康二氏は語る。今後の計画としては、実際の災害を想定した訓練を実施し、予測どおりの復旧ができるかどうか試してみたいとのことである。しかし実際には24時間365日操業している森永乳業では実現はなかなか難しいとのことだ。

災害対策という直接的には事業活動への貢献が見えにくい取り組みに対して、これだけの投資を決断するまでには紆余曲折があったと想像していたのだが、実際にはスムーズに承認されたという。この判断の基には日常生活を支える飲料/食品を提供する会社として、自らを社会インフラと捉えその責任を全うするという経営TOPの強い意志と、事業を支えるITの重要性に対する深い理解があったのである。

災害に対する従業員の意識も高く、会社を挙げて周到な準備をしている森永乳業の戦略は、災害にびくともしないほど磐石に見えた。