佐川急便株式会社の"情報システム刷新プロジェクト"は、2016年までに年間100億円のITコスト削減を目指す取組みだ。その第一弾となった"新貨物システム"は、2006年10月に稼動を開始した。佐川急便が求める、大容量の貨物関連のデータを安定的に処理して、さらにコストを削減するという大きな課題を解決するために、佐川コンピューター・システム株式会社とフューチャーアーキテクト株式会社は、64ビットのIAサーバーによるオープン・システムへのダウンサイジングを実現した。
目標は情報システムの運用保守コストの年間100億円削減

- 佐川急便株式会社
営業部 部長
(システム推進担当)
北東 卓氏
今年3月に創業50周年を迎えた佐川急便株式会社は、宅配便やe-コレクトサービス、メール便といったデリバリー事業で堅調な増収を続け、好調な売上げを達成している。同社は、SGホールディングスグループの中核会社として、デリバリー事業の強化・拡大に加え、グループ各社と連携し、物流のトータルソリューションの提供を図っている。また、競争力の強化やサービスの充実などを目的として、2016年までに情報システムの年間運用保守コストを100億円削減する"情報システム刷新プロジェクト"を2005年にスタートさせた。そのプロジェクトの責任者であり、佐川急便 営業部 部長(システム推進担当)の北東 卓氏は、その取組みについて次のように話す。
「情報システム刷新プロジェクトは、情報システムにかかる年間のランニングコストを100億円削減することが目標です。そこで、各社にコスト削減のための提案を求めてきたのですが、満足できる内容はなかなか得られませんでした。我々は思い切った提案を求めていました。しかし、信頼性や性能の確保を前提としたメインフレームを更新する案しか出てこなかったのです。」
情報システム刷新プロジェクトの第一弾は、メインフレームで処理していた"貨物システム"の更新だった。2007年にハードウェアを更新しなければならない貨物システムをそのまま使い続けるか、コスト削減につながる新たな方法はないか、と改善策を模索していたときに、北東氏はフューチャーアーキテクト株式会社の提案を受ける。それは、IAサーバー群で複数のWebアプリケーションを実行できるIT基盤を構築し、Javaで開発したアプリケーションに移行するというオープン・システムへのダウンサイジング提案だった。
メインフレームからのダウンサイジングに求められた条件

- 佐川コンピューター・システム株式会社
システム部鳥丸センター 係長
置 兼二氏
"新貨物システム"の開発プロジェクトは、佐川コンピューター・システム株式会社とフューチャーアーキテクトによって、2005年8月にスタートした。佐川コンピューター・システム システム部 烏丸センター 係長の置 兼二氏は、プロジェクトの目的と開発規模について次のように話す。
「新貨物システムは、2005年8月にスタートした情報システム刷新プロジェクトの第一弾でした。5カ年計画となるこのプロジェクトでは、ダウンサイジングによるコスト効果だけではなく、オープン・システムによる拡張性と安定稼動も重要なテーマでした。今回構築したシステムは、佐川急便が取り扱う貨物が、ピーク時で1日最大1,000万個に達しても対応できるように設計しています。1個の貨物について配送状況を管理するために、6件以上の追跡データが必要になります。新貨物システムでは、1日最大で約1億件のデータを処理することが可能になります。」
これまで佐川急便の貨物システムは、メインフレーム以外では稼動できないといわれていた。業務の中核となる貨物情報を一元管理するためには、1億件以上の貨物データを格納し、1万台以上の社内クライアントからの貨物データをリアルタイムで参照できるようにするだけではなく、インターネットを経由した一般の利用者からの検索にも即時に対応しなければならない。大量データの高速処理と24時間365日の無停止運用は必須で、社内ユーザーからインターネット越しのエンドユーザーに至るまで、タイムリーに情報提供をおこなうというメインフレームを超える処理能力がオープン・システムに求められていた。
佐川急便は基幹システムを日本最大級のオープン・システムに刷新

- フューチャーアーキテクト株式会社
執行役員
流通サービス事業本部
PSI事業部長 松井 健司氏
佐川急便の新貨物システムを提案し、開発を推進してきたフューチャーアーキテクトの執行役員 流通サービス事業本部 PSI事業部長の松井健司氏は、新貨物システムについて次のように説明する。
「このシステムの開発において何よりも重視した点は、処理速度と安定稼動でした。我々の提案では、スケールアウトによる拡張性を重視していました。そのためには、Webアプリケーションからアクセスするデータベースにも、小さな単位で大量の処理ができる負荷分散と並列処理が求められます。この高度な要求に十分応えられる性能をもつデータベースがOracle Database 10gでした。」
フューチャーアーキテクトの技術検証メンバーは、メインフレームによるピーク時の処理よりもさらに5倍の処理量を想定して、将来的な負荷の増加にも耐えられるように、サーバーとデータベースの性能を調査した。その結果、8ノードのOracle Real Application Clustersによるシェアードサービス環境で、佐川急便が必要とする貨物データの処理ができると判断した。新たに構築した8ノードのOracle Real Application Clusters構成は、4ノードが1日1億件にのぼる貨物情報の取込みや提供などのデータベース処理に対応し、2ノードが営業店やインターネットによる利用者からの貨物照会に対応し、残りの2ノードでバッチ処理やレポート作成、メンテナンス作業をおこなうシェアードサービス環境となる。 「今回のシステム提案では、1日1億件以上の貨物データを処理し、数十億件の貨物データを格納しなければなりません。そのデータ処理を同時に複数のWebアプリケーションから利用するには、Oracle Database 10gによるシェアードサービス環境の構成が良いと考えました。」と松井氏は補足する。
秒間1,000トランザクションを処理する新システムは24時間の連続稼動を実現
2006年10月から稼動を開始した新貨物システムは、1日約1億件という大量のデータ処理と、メインフレームに匹敵する安定稼動を実現した。1億件のデータを処理する4ノードのOracle Database 10gでは、Oracle Partitioningのパーティショニング機能を活用することで、レスポンスの問題も解決している。
「2007年4月には、4カ月間の並列稼動をおこなっていたメインフレームの"旧貨物システム"を完全に停止しました。情報システム刷新プロジェクトでは、お客様へのサービス拡充や新技術の導入などを見据えて、世界標準のアーキテクチャを採用し調達価額の適正化を図るだけではなく、システムの強化や新規開発においても、柔軟な拡張性によるIT投資の適正化を目指していきます。」と置氏は話す。
新貨物システムでは完全な24時間365日の連続稼動を実現し、システムのパッチ修正などにもノンストップで対応できるようになった。運用の負担を軽減しただけではなく、IT基盤としてのサービスレベルも向上させたのである。「2016年の100億円削減に向けて、今後も積極的なコスト削減に取り組んでいきます。そのためには、その時々の技術の進歩を見極めて、しっかりとした判断をおこなっていきます。当社としては、今回の新貨物システムによって得られたメリットを最大限に活用して、お客様に対するサービスの向上と、他社にない付加価値の提供を推進していく考えです。」と北東氏は今後の展望について語った。




